ビジネス社より新刊『黒い経済白書』利上げと資源高で国際情勢は一触即発が12月3日にビジネス社より出版されました。
中国湖北省武漢で新型コロナウイルスの感染者が初めて見つかってから、ちょうど2年になります。日本国内では、1日あたりの新規感染者が東京で20人台、全国でも100人台と激減し、ようやく以前の日常を取り戻しつつあります。
ところが、米国では1日の新規感染者が10万人を超え、欧州でも過去最多を更新し続けています。さらに、感染力の強い変異種オミクロン型が登場、これまでの主流だったデルタ型から、脅威的な速度で置き換わりが進んでいます。
オミクロン型はデルタ型に比べて「感染力は相当強いものの、毒性は低く重症化する割合は低い」という見方が大勢を占めているようです。私自身も、デルタ型にせよオミクロン型にせよ新型コロナウイルスによる人体への影響はそれほど深刻なものではないと考えています。これまでの著作でも、新型コロナウイルスの脅威は人体への影響ではなく、社会システムを混乱させ経済を破壊することだと書いてきました。本書でも新型コロナウイルスの本質は「人の健康よりも社会構造を破壊することが問題である」という視点で、その暴力性について解説しています。
近代国家は市民が生命・財産・人権などの権利=「自然権」持っているとしています。市民と国家は、市民が税金を納める代わりに、国家は「自然権」を保障・防衛するという契約関係にあります。自由で平等な個人が互いに契約を結ぶことによって国家や政治社会がつくられたとするホッブズの社会契約説です。この自然権を脅かし続けているのが新型コロナウイルスなのです。民意とは無関係に社会構造を暴力で破壊するテロや革命と同じように、新型コロナウイルスは近代国家と市民との社会契約を破壊する「暴力」だと思います。
未だに「コロナはただの風邪」説も根強く、死者数ではインフルエンザの方が脅威だと考える人も多いです。そのとおりです。人の健康に与える被害はインフルエンザと変わらないでしょう。しかし、人類が初めて経験する社会構造を破壊する力を持つ新しい風邪なのです。本書ではその脅威とコロナ禍継続説について、疫病の歴史から考察してみました。コロナ禍はまだ継続し終息の時期は不透明ですが、人類と疫病の歴史から考えれば、いずれインフルエンザと同じ季節性の風邪になることだけは確定しています。
新型コロナウイルスの登場は、私たちの日常だけでなく、国家間の関係性や社会構造などあらゆるものを変えました。経済構造の変化はもちろん、伝統的な価値観の転換も進みました。2年間に渡るコロナ禍は私たちの世界を一変させたのです。そしてその変化はこの先も続きます。本書が、まだ継続しいつかは終息するであろうコロナ禍とその後の世界、そして本当の豊かさとはなにかを?を考える一助になれば幸いです。
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